PROJECT

X dojo最終発表

1. X dojo(クロス道場)の主旨・経緯説明

MOCの杉田創発本部長より、「X dojo」は、従来の「商品を作ってから売り先を探す」という手法ではなく、「買う人(需要)が先にあり、その要望に合わせて作る」というマーケットイン型の事業開発を基本骨格としていると説明しました。

今年度は、宮崎県に本拠地を置く航空会社 ソラシドエアが「買う人」となってテーマを提示し、それに対して共創パートナーを募集しました。

これに対し、宮崎県内を中心に東京、福岡などから28件の応募があり、約2ヶ月間にわたる面談を経て、最終的に2社が選出されたとの経緯が紹介されました。

2. ソラシドエアとの協業内容の最終報告

(1)株式会社ピエクレックス(清水玲佑氏):空から笑顔の種をまく ~ソラシドエア × P-FACTSトラベル体験~

村田製作所のグループ会社である株式会社ピエクレックスは、力を加えることで電気が発生し、薬剤を使わずに抗菌効果を発揮する独自の繊維「ピエクレックス」を用いた提案を行いました。

この繊維は植物由来のポリ乳酸を原料としており、最終的には土に返して堆肥化できる「循環インフラ(P-FACTS)」の特徴を持っています。

ソラシドエアとの協業では「ゴミを出さないエアライン」をテーマに、長崎空港でのハンドタオル配布イベントを通じた認知度調査を実施しました。

アンケートでは、使い古した繊維の処理について多くの関心が寄せられ、環境に配慮した取り組みへのポジティブな反応が得られました。

また、宮崎農業高等学校と連携し、実際に繊維を堆肥化して野菜を育てる実証実験も継続しており、地域内での資源循環モデルの構築を目指しています。

(2)CAPS(宮崎カカオ/AKASAKA farm/Pioneer Pork三社共同):新たな農業価値創出を行うみやざきアグリツーリズム

CAPS(キャップス)は、宮崎市内で活動する若手農家ら3社による連合チームです。彼らは、豚の放牧や自然栽培、希少な国産カカオの栽培といった独自の農業スタイルを強みとし、それを体験型観光に昇華させる「アグリツーリズム」を提案しました。

実証実験として実施されたモニターツアーでは、東京からの参加者を含む約40名が、豚の餌やり、野菜の収穫、収穫物の調理、さらには青島観光などを体験しました。

アンケートの結果、「生産者と直接話せる価値」や「命の体験」への満足度が非常に高く、単なる観光を超えた地域コミュニティへの関心が示されました。

今後はターゲットを企業研修などにも広げ、地域連携プラットフォームとしての確立を目指しています。

(3) 総括 : ソラシドエア

ソラシドエア地元価値共創本部の伊藤本部長は、今回の2社との協業を振り返り、全く異なる切り口でのアプローチが非常に有意義であったと述べました。

ピエクレックスの技術は、大量の制服や機内備品を廃棄せざるを得ない航空業界の課題解決に直結する可能性があり、CAPSの熱量は、かつて同社が新規就航した当時の情熱を彷彿とさせるものでした。

航空会社にとって、人口減少による航空需要の減退は死活問題であり、「関係人口」を増やす地域課題の解決は、自社の事業継続に直結します。

単発のプロジェクトで終わらせるのではなく、5年、10年という長いスパンで共に成長し、地域に根ざした価値を創造し続ける姿勢を強調しました。

第二部 パネルディスカッション

【テーマ】企業は、どうやって”次の柱”をつくるのか。-新規事業立ち上げのリアル-

パネルディスカッションに先立ち、登壇される各社から会社の取り組み概要について説明していただきました。

1. テレビ宮崎 (UMK) 矢野康平氏:放送の枠を超えた地域インフラへの変革

テレビ宮崎の矢野氏は、2018年から始まった同社の新規事業開発の変遷を紹介しました。当初は放送関連コンテンツの模索から始まりましたが、現在は「ビジネス推進部」や「C&C(チェンジ・アンド・チャレンジ)推進部」といった専門部署を設け、既存の枠組みに囚われない挑戦を続けています。

過去にはコロナ禍でのテイクアウトアプリやオンラインツアーなどの失敗も経験しましたが、現在は教育支援事業「ひなた探究」や、地域コミュニティ施設「&Labo(アンドラボ)」の運営など、「地域課題を解決するライフライン」としてのメディア像を追求しています。

2. レボニティホールディングス 伊藤智之氏:警備業のイメージを塗り替えるクリエイティブの力

警備会社「セキュリティロード」を中核とするレボニティホールディングスは、創業40年の歴史の中で新たな価値を生み出すべく、アートディレクター(シン イシカワ氏)を採用するという異例の決断を下しました。

「3K(きつい、汚い、危険)」と思われがちな警備業に「かっこいい」という価値を加えるため、映画のポスターのようなキービジュアルやプロモーション動画を制作しました。当初は社内からの反発もありましたが、ビジュアルが形になるにつれ、隊員たちが自らの仕事に誇りを持ち始めるという「社内の変化」が最大の成果となりました。現在は「販売組織」から「組織販売」への転換を掲げ、属人的な営業からブランド力による展開を目指しています。

3. NTT西日本 宮崎支店 舩越一海氏:通信技術を核とした「森林DX」

NTT西日本の舩越氏は、同社が「西日本電信電話」という名前から連想される「電話の会社」からの脱却を図っている現状を説明しました。宮崎支店独自の取り組みとして注力しているのが、県土の75%を占める森林を対象とした「森林DX」です。

ICTを活用して森林の価値を可視化し、J-クレジット(二酸化炭素吸収量の売買)ビジネスや、森林情報のプラットフォーム構築を進めています。これは単なる技術提供ではなく、地元の森林組合や大学、銀行と連携し、地域全体で森林資源を収益化するエコシステムの構築を目指すものです。森林資源を収益化することによってサステナビリティを目指すものとなっています。

◎パネルディスカッション モデレーター:MOC 杉田剛氏

パネルディスカッションでは、既存の枠組みを超えた挑戦を続ける3社が、組織運営や人材、そして10年後の展望について本音で語り合いました。ここではディスカッションで深掘りされた、より実践的・組織的な側面に焦点を当ててまとめます。

1. 新規事業に踏み出した「本質の動機」

モデレーターのMOC杉田から「なぜ既存事業が安定している中で、あえて未知の領域(多角化)へ踏み出したのか」という問いに対し、各社は表面的な事業展開以上の危機感と使命感を語りました。

  • テレビ宮崎(UMK): 矢野氏は、人口減少や放送技術のIP化(インターネット化)といった環境変化の中で、従来の「電波を送るメディア」という形態だけでは地域の支持を得られなくなるとの懸念を示しました。そのため、「地域課題を解決するライフライン」へと自らの定義をアップデートする必要があったと述べています。
  • NTT西日本: 舩越氏は、2019年頃に当時の会社方針でもあった「地域のビタミン活動」が転換点であったと明かしました。各支店が地域独自の課題に向き合う中で、宮崎支店は県土の75%を占める森林という、宮崎ならではの「本質的な課題」をビジネスの核とすることにしました。
  • レボニティホールディングス: 伊藤氏は、3K(きつい、汚い、危険)のイメージが強い警備業において、人材確保はもはや「生存戦略」であると強調しました。クリエイティブの力で「かっこいい」という価値を加え4Kにすることは、単なるPRではなく、隊員たちの自尊心を守り、企業の持続可能性を確保するための不可欠な投資であったと述べています。

2. 情熱を組織全体へ広げる「人材」と「評価」

新しいことに挑戦する際、社内の無関心や反発をどう乗り越えるかが議論の焦点となりました。

  • 「ジョブチャレンジ」による自発的な挑戦: NTT西日本では、自分が挑戦したい他の部署(グループ会社など)へ希望を出し、異動することができる制度があります。これにより、既存の組織構造に縛られず、 「チャレンジしたい」という純粋な想いで新たな仕事に取組める仕組みが整っています。
  • 「1-3-9-27-81」の法則と社内の変化: レボニティホールディングスの伊藤氏は、当初は社内から「そんなことに意味があるのか」と冷ややかな視線を浴びたことを明かしました。しかし、1人の情熱が3人に、3人が9人に……と徐々に伝播し、実際に制作された「かっこいい」ポスターを隊員たちが誇らしげに語り始めたことで、組織全体の空気が劇的に変わったと語りました。
  • チームによる「01」の突破: テレビ宮崎では、新規事業を個人に委ねるのではなく、専門部署である「ビジネス推進部」や「C&C推進室」がチームとして伴走しています。特に、実際に子育て中の女性社員が立ち上げた「MONE(モネ)」のように、個人の当事者意識(思い)をチームで支えて具現化する体制を重視しています。

3. 現場への介入と「収益基盤」のバランス

新規事業を継続させるためには、理想だけでなく収益と現場の信頼が不可欠です。

  • 「冷やかし」を超えた信頼構築: • 「現場へ足を運ぶ」ことで得られた信頼: NTT西日本のメンバーが森林組合へ飛び込んだ際、当初は「口先だけでは?」と誤解される部分もありましたが、何度も現場に足を運び、膝を突き合わせて対話を重ねる中で、「雑誌やニュースには載っていない、現場の切実な課題」を掴むことができ、それがビジネスの種となりました。
  • 既存事業とのシナジー: 3社に共通していたのは、「既存事業の利益(アセット)があるからこそ、新規事業に投資できる」という現実を肯定しつつ、それに甘んじない姿勢です。テレビ宮崎は「取材力」を課題解決に転換し、レボニティホールディングスは「警備」の現場をクリエイティブの力で活性化させるなど、既存のリソースを賢く再定義しています。

4. 10年後の未来:宮崎への還元と継続

最後に、3者が描く未来像が共有されました。

  • 雇用と機会の創出: UMKの矢野氏は、新規事業を通じて宮崎に新たな雇用を生み出し、若者が「宮崎に残りたい、戻りたい」と思える環境を構築することを掲げました。
  • ブランドによる組織販売: レボニティホールディングスの伊藤氏は、特定の個人に依存する「販売組織」から、ブランドの力によって組織全体で価値を届ける「組織販売」への転換を完了させたいと述べました。
  • 事業のバトンタッチと持続: NTT西日本の舩越氏は、10年後には自身が引退している可能性を見据えつつ、「次世代へ事業をしっかりと引き継ぎ、地域に収益を還元し続けるサステナビリティな仕組み」が確立されていることを切望しました。

この討論を通じ、既存のインフラ企業であっても、個人の情熱と組織の制度を連動させることで、地域を動かす大きな力になれるという展望が示されました。

イベント名 X dojo最終発表
開催日程 2026/03/17(火)開催
開催時間 15:00-17:00
開催場所 MOC
参加費 無料
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