MOCグランドオープンイベント_第1部 「新規事業スタートアップ」スタートアップピッチ
第1部 「新規事業スタートアップ」スタートアップピッチ
第1部を締めくくるプログラムとして、起業家4名によるスタートアップピッチが行われました。3分間という限られた時間で事業概要と今後の計画をプレゼンし、ゲストから応援のフィードバックをもらうプログラム。日本の未来を明るくさせるユニークなビジネスを知れる場となりました。
世界を救うスーパーヒーロー「スーパーワーム」
最初に登壇したのは株式会社スーパーワームの古賀勇太朗さん。“昆虫”の利活用を通じ、世界の食・エネルギー問題を解決することを目指しています。
社名でもあるゴミムシダマシの幼虫「スーパーワーム」は、従来の昆虫の10倍の速度で成長し、生産効率も高いことから飼料原料や有機肥料、バイオ燃料として注目されています。
古賀さんは世界で初めてスーパーワームの大量生産技術を確立し、現在は成長の著しいバイオ燃料市場への参入を進めています。
「弊社は創業1年半ながら、すでに大企業との連携も開始しており、100トン分の購入確約を取りつけています。2026年には実証プラントを建設し、27年には商業プラントの建設、28年にIPOを実現したい。宮崎県から世界一の企業になることを目指します」(古賀さん)
フィードバックは、株式会社宮崎太陽キャピタルの野村公治代表が務めました。
創業間もないころの古賀さんを知っている野村さんは、その成長スピードに驚きを隠せないようでした。「バイオ燃料分野は大手をはじめ参入が相次いでいる。早期に生産体制を確立させてください」と激励を送りました。
厄介な流木、廃材から純国産で環境に優しいバイオ炭をつくる
続いて、株式会社HATSUTORIの服部かおるさんが登壇。服部さんは看護師・助産師として働いたあと、経営学を学ぶため宮崎産業経営大学に進学。ビジネスプランコンテストをきっかけに、バイオ炭の研究開発を行うため起業したという異色の経歴の持ち主です。
バイオ炭はダムに溜まる流木や林地残材などの廃材を原料としてつくられるサステナブルな製品。森林環境を改善し、災害リスクを低めることから注目されています。しかし、製造方法が確立されていない、製造コストがかかるなどの理由により、日本ではまだ普及していません。
その点、HATSUTORIは高効率かつ環境負荷の低い製炭技術を確立したことで競合他社に優位性を持ちます。
「製炭炉は現在3号機まで順調に開発が進んでいます。アイデア自体は8号機までありますが、今年は産業廃棄物に対応した4号機、5号機の開発を達成したいと考えています」(服部さん)
これに対し、フィードバックを行ったのはAGRIST株式会社の清水秀樹さん。
テクノロジーで農業の課題解決を目指す同社にとって、HATSUTORIの開発スピードは素直に「すごい」とのこと。「農業では脱炭素が注目されているので、我々の分野とも相性がいい。農家をはじめ広く普及すると一次産業をめぐる環境も変わるのでは」と語っていました。
「都市連携による死因究明システム:住みやすい街づくりの礎」
3人目の広島県から来た、広島の救命医である合同会社MONSHINの田邊輝真さんは、10年間現場で感じた日本の死因不明率の高さ(特に、広島県は死体解剖率ワースト1位であることから、「自治体との連携で変える死因不明のイノベーション」を唱えています)を問題視しています。そこで、ドラマ『アンナチュラル』に登場する架空の死因究明機関「UDIラボ」のような研究施設をつくることで地域医療の発展、行政施策につなげようとしています。
病院外に民間の専門施設を設け、広島市や宮崎市など都市間の連携とAIなどのテクノロジーを活用することで、解剖率が低くても納得できる死因究明を実現し、大量の医療データを活用して地域医療の底上げと安心して住める街づくりに貢献したいと語っており、このビジョンに共感する仲間や投資家、壁打ち相手を求めています。
「この事業の目的は安心して住める街をつくること。従来の救命センターとは異なる、オープンで多様な人材が集う場所を民間側から提案したい。AIなどテクノロジーの力を使い、大量の医療データを蓄積し活用することで地域医療の底上げを担いたい」
これに対し、株式会社ガイアックスにて執行役・スタートアップ事業部責任者を務める佐々木喜徳さんがフィードバックを行いました。
社会実装する際、個人や企業と組んでマネタイズする助言が寄せられたほか、「死因究明で得られるデータは、予防医療など健康分野にも応用が効くはず」と期待を寄せていました。
ローカルに息づく健康食の魅力を発信
最後のピッチ登壇者は株式会社漢方キッチンの阪口珠未さん。阪口さんは漢方薬膳研究家として、飲食店や社員食堂のメニュー開発、薬膳教室、テレビのメニュー監修など幅広く活動しています。その他、著作は10冊を超え、情報発信も精力的に行っています。
キャンピングカーで全国を旅する趣味を持ち、全国各地の食に触れた経験から「和のスーパーフード育成事業」を提唱。健康効果は高いが、全国的には知られていない地方の食材の魅力を漢方・薬膳の観点から伝える活動をしていきたいと話します。
「薬膳料理は縁遠いものと思われがちですが、実は身近な食材で簡単につくることができます。シニア層が増加するなか、食で健康を保つ意識は高まっているので、ぜひ日常の食に薬膳を取り入れてみてください」(阪口さん)
フィードバック担当は、D2C&Co.株式会社で共創投資担当シニアマネジャーを務める桝井綾乃さん。
「食べる」ことは生きる活力になると話し、事業への期待を語っていました。「薬膳料理を日常的に食べられると予防医療になりますよね。働き方や生き方の選択を食事の部分から支える社会がやってきそう。その点、日本食の強みが生かされるのでは」とエールを送りました。