PROJECT

地域資源を”物語”で商品化する! 〜久留米クラフトジン事例から学ぶ、宮崎の可能性〜

「地域には、まだ名前のない価値が眠っている。」
〜クラフトジンとカカオが描く、宮崎発・新しいローカルビジネスの可能性〜

「地域資源を活かしましょう。」地方創生の現場で、何度も耳にする言葉です。

しかし、本当に価値を生み出すのは、特産品や観光地そのものではありません。そこにある人の想いや物語です。今回のトークセッションには、宮崎県でクラフトジンブランド「Bottled Local」を展開する高橋米彦氏と、宮崎で国産カカオの栽培に挑む大田原尊之氏が登壇しました。

異なる分野で活動する二人ですが、その根底にあったのは、「商品をつくるのではなく、地域の物語を編集する。」という共通の思想でした。

地域を「蒸留する」という発想

クラフトジンは今、世界的に注目を集めています。その理由は、ジンという酒が持つ圧倒的な自由度にあります。ジュニパーベリーを使うという基本ルール以外は、柚子や杉、茶葉、果実など、その土地ならではの素材を自由に表現できるからです。

高橋氏は、「ジンを造っているというより、その土地を蒸留している感覚なんです」と語ります。

山に入り、地域の人たちと森林を整備し、その土地の植物を活かして一本のジンをつくる。そして蒸留所を訪れた人には、地域の自然や歴史まで体験してもらう。ジンは単なるお酒ではなく、地域との新しい接点を生み出すメディアになっていました。

「味だけでは人は動かない」

高橋氏が繰り返し語っていた言葉があります。「味だけでは人は動かない。」

誰がつくったのか。なぜ、この土地で挑戦しているのか。どんな人たちと一緒につくっているのか。こうした背景やストーリーがあって初めて、人は商品に共感し、その土地に興味を持つ。だからこそ高橋氏は、お酒を売るのではなく、人が地域を訪れ、地域とつながる仕組みづくりに力を注いでいます。

宮崎だからこそ生まれるチョコレート

続いて登壇した大原氏が挑戦するのは、宮崎でのカカオ栽培です。「カカオは海外で育つもの」という常識に挑み、栽培だけでなく、味を大きく左右する発酵や乾燥まで宮崎で行うことで、「宮崎だから生まれる味」を目指しています。

さらに構想しているのは、農園でカカオを収穫し、自ら発酵やチョコレートづくりまで体験できる場所づくり。商品を販売するだけでなく、その土地でしか味わえない体験そのものを価値にするという発想です。

地域課題は、価値に変えられる

二人の話に共通していたのは、地域課題を見る視点でした。森林の荒廃。耕作放棄地。規格外農産物。こうした課題を「解決すべき問題」と捉えるのではなく、新しい価値を生み出す素材として考えています。使われなくなった杉はジンになる。地域で育つカカオは世界に誇るチョコレートになる。地域資源を消費するのではなく、新たな価値へと編集する。そこに、これからのローカルビジネスの可能性がありました。

「体験」が地域のブランドになる

講演の最後には、参加者自身がボタニカルを自由に選び、自分だけのクラフトジンをつくるワークショップが開催されました。

柚子、カモミール、山椒、カカオ、シナモン、杉…。同じ素材を前にしても、出来上がる香りは誰一人として同じではありません。地域づくりにも、正解はありません。だからこそ面白い。

参加者からは、「自分の地域でもやってみたい」「地元の素材ならどんな香りになるだろう」といった声が自然と上がり、会場全体が新しいアイデアを生み出す場へと変わっていきました。

地域の未来をつくるのは、「編集力」

今回のセッションを通して強く感じたのは、地域にはまだ名前の付いていない価値が数え切れないほど眠っているということです。それを見つけ、意味を与え、物語として伝えることで、地域はブランドになります。クラフトジンも、クラフトチョコレートも、その本質は飲み物や食べ物ではありません。

人と地域をつなぎ、新しい関係を生み出すコミュニケーションツールなのです。

宮崎には、世界に誇れる素材があります。そして、その可能性を信じ、挑戦する人たちがいます。一本のジンから、一粒のカカオから始まる挑戦。その小さな一歩が、宮崎の未来を描き直す大きな力になっていく――。そんな希望を感じさせてくれる、熱量あふれるトークセッションでした。

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