PROJECT

みやざき創業アカデミー2026 キックオフイベント

「気づいてしまった」人から、世界は変わり始める — 宮崎発、社会起業家たちのキックオフ

昨年度に続き、宮崎市から宮崎オープンシティ推進協議会が受託し、ボーダレスアカデーと連携した「みやざき創業アカデミー(通称:ボーダレスオープンアカデミー in Miyazaki)」が開講することとなりました。今回はそのキックオフイベント。
「社会課題解決型のビジネスをやろうよ」。堅そうに聞こえるかもしれませんが、会場に流れていたのは終始、前向きで熱量の高い空気でした。今日はその様子を、読んだ人の背中をそっと押せるような形でお届けしたいと思います。

「行政だけでは、社会課題は解決できない」

まず登壇したのは宮崎市副市長の永山さん。人口減少、少子高齢化、産業の停滞、教育、環境——数え切れないほどの社会課題を前に、「市役所だけで抱え込むのではなく、民間の力を借りながら、官民連携で向き合っていきたい」と語りました。


象徴的だったのが、副市長自身が日頃使っているというカバンの話です。それはバングラデシュで作られたもの。貧困層の多い地域で、革製品を作る技術を身につけてもらうことで生活を成り立たせる——そんなソーシャルビジネスから生まれた一品なのだそうです。「ビジネスという形でしっかり収益を上げながら課題を解決していく、新しいやり方がここにある」という言葉に、会場の空気が少し引き締まったのが印象的でした。

「不便」と「社会課題」は、まったくの別物

続いて登壇したのは、ボーダレス・アカデミー代表の半澤さん。冒頭、会場にこう問いかけました。

「何か変えたい現実とか、作りたい未来を、お持ちの方いらっしゃいますか?」

すぐには手が挙がらない空気。でも半澤さんは続けます。「今日、このイベントに来られたということは、何かしら持たれているんじゃないかな」。半澤さん自身の原点は、大学時代にインドを訪れた際に出会った、一人の物乞いの少年だったといいます。「この不条理な世の中で、何かせずにはいられない」——そこから、社会課題をビジネスで解決する会社「ボーダレス・ジャパン」でのキャリアが始まりました。


ボーダレスグループは2007年創業、現在20期目。掲げるパーパスは「SWITCH TO HOPE」。苦しい状況を単に「ゼロ」に戻すのではなく、「希望がある状態」に変えていく——そんな考え方のもと、世界15カ国で45もの事業を展開し、2025年度の売上規模は約100億円にのぼるといいます。自然エネルギー100%の電力事業、貧困層の職人を雇用するものづくり事業(すでに400人を雇用)、農家の貧困問題に取り組む事業、社会課題への関心を広げるメディア事業——「一つの課題が解決すればいい、とは考えていない。すべての社会課題が解決される状態を目指したい」という言葉には、スケールの大きさを感じずにはいられませんでした。

そして、この日いちばん腑に落ちた話がこれです。「不便」と「社会課題」の違い。

不満や不便には、マーケットニーズがある。誰かがお金を払うから、放っておいても誰かがビジネスとして解決してくれる。一方で社会課題は、社会の構造から生まれる問題で、解決が難しく、儲かりにくいからこそ、誰も手をつけずに放置されてしまう。

「それでいいんだろうか?」という問いから生まれるのがソーシャルビジネスだ、と半澤さんは言います。効率を追い求める世の中で、あえて「非効率」なところにこそ、自分たちにしかできない仕事がある——このメッセージは、これから何かを始めようとしている人の背中を、静かに、でも確実に押してくれる言葉でした。

ファーストペンギンになろう、そして後ろから押す人になろう

半澤さんが紹介したのが「ファーストペンギン」という考え方です。誰もやったことのない荒波に、最初に飛び込んでいく人。ボーダレス・アカデミーは、そんな挑戦者を育てるために2018年10月にスタートし、これまで全国で1,600名以上が受講、本気で事業プランを描いた450名のうち、実に3割がすでに法人化・起業を実現しているといいます。

小学校の先生だった人、デザイナーだった人、お笑い芸人だった人——最初から「絶対に成功しそうな経歴」の人ばかりではなかった、という話も印象的でした。誰もが、何かに気づいてしまったところから始まっている。

そしてもう一つ、心に残った言葉があります。

先頭を走る人が輝いて見えても、実は後ろから必死に押されているだけかもしれない。2人目、3人目が「変なことやってるよね」と後ろ指を指すのではなく、「ナイストライだね」と言い合える文化になれば、挑戦者はどんどん生まれていく。

挑戦するのは一人でいい、という話ではありません。挑戦を「応援する」人がいて、初めて社会は変わっていく——そんなメッセージでした。

「気づいてしまった」から、始まった二人の物語

キーノートの熱量そのままに、後半は昨年度の受講生お二人によるパネルトークへ。進行はMOC理事でメンターも務める村岡さんです。

上水さん:居場所のない子どもたちに、居場所を

最初のきっかけは、友人の子どもが学校に行けず、どこにも繋がれずにいたことでした。「悩みを解決する場所がなかったから、とりあえず作ってみよう」と、2023年に子どもの居場所「ドリームサポート」を開設。2024年には、フリースクールや医療機関、相談窓口など32団体をつなぐネットワーク「ソラチズ」を立ち上げました。


印象的だったのは、事業を始めた理由を聞かれたときの答えです。

「なんでやってるんだろう、こんな大変なのに」と思った時に、自分の子どもや孫が大きくなった時に、この場所に連れて来たくないなと思った。

我が子、我が孫のために。誰かが始めなければ変わらないから、自分がやる。そのまっすぐな思いに、会場も静かに引き込まれていました。

甲斐さん:「宮崎は疲れている」という気づきから

もう一人の登壇者、甲斐さんは市内でドライヘッドスパのサロンを営んでいます。掲げるビジョンは「休息で企業を強くする」。健康経営と女性の活躍を掛け合わせたビジネスに挑戦しています。

前職は公務員。心を病んでしまう同僚を間近で見てきた経験から、日本全体で健康経営がうまくいかないことによる経済損失が年間7兆6000億円にのぼるという数字にたどり着きます。さらに調べを進める中で見えてきたのが、「宮崎はいま一番疲れている県なのでは」という衝撃の気づきでした。自殺率は九州ワースト1位、離職率も高く、若者の県外流出率は全国ワースト3位——。

疲れている時って、自分が疲れていることに、もう慣れて気づかないことがある。それが県全体でも「これが普通」になってしまっていた。

そこから生まれたのが、企業に出張してヘッドスパを提供し、その効果を数値化することで、企業側にも「健康経営が進んでいる」ことを可視化してもらう、というアイデアです。3年以内に9割が廃業するというリラクゼーション業界の厳しい現実に向き合いながら、セラピストと企業、そして地域をつなぐ仕組みづくりに挑戦しています。


「そんなに欲張っていいのかな、と思っていた」と語る改さんに、メンターから返ってきた言葉が印象的でした。

「そこを欲張っていいんだよ」

このイベントの翌日には、改さんは県のビジネスプランコンテストに出場することが決まっていたそうです。「本当にボーダレス、やっててよかった」という言葉に、会場からは温かい拍手が送られました。

見つけてしまったものを、見なかったことにしない

パネルトークの中で、進行役の村岡さんが放ったひと言が、この記事のタイトルにも通じる、今回いちばん心に刺さった言葉でした。

見つけてしまったもの、それをどうしても気になって、自分が発見したから自分がやらなければならないんじゃないかという使命感に駆られる人たちがいる。それが起業家だと思う。


道端にゴミが落ちていても、たいていの人は「まあいいか、誰か拾うだろう」とスルーしてしまいます。でも、中にはどうしても見過ごせず、「自分がやらなきゃ」と動き出してしまう人がいる。神水さんも、改さんも、そうやって「気づいてしまった」ことから、事業が始まっていました。

3期目、宮崎から始まる新しい挑戦

このイベントは、宮崎市とボーダレス・アカデミーが連携して実施する「ボーダレスオープンアカデミー宮崎」の3期目キックオフでした。プログラムはDAY1からDAY4までの講義・ワークと、最後の成果報告会で構成される全5日間。オンラインでの講義とワークを軸に、キックオフと成果報告会だけリアルで実施するという設計です(詳細はこちらをご覧ください)。

特徴的なのは、いきなり「儲かるか、儲からないか」からは考えないこと。目の前で困っている人がいたら、まずそれをどう助けるかを考え、社会課題の構造を明らかにしたうえで、ようやくビジネスモデルを設計していく——このプロセスを、洗練された「型」に沿って埋めていく形で進めていきます。歌舞伎の世界で「型を知ってこそ型破りになれる」と言われるように、まずは型を知ることから始めるという発想が印象的でした。

メンターには、実際に地域で事業を営む実業家たちが名を連ね、受講生同士も互いにフィードバックし合いながら、切磋琢磨していく仕組みが用意されています。応募の締め切りは8月2日。起業前、あるいは起業から3年以内の方が対象とのことでした。

おわりに

「社会課題」と聞くと、あまりに大きすぎて、自分ごとにするのが難しく感じるかもしれません。でも今回登壇した誰もが、最初から壮大なビジョンを掲げていたわけではありませんでした。友人の子どもの不登校、職場で疲れ切っていく同僚の姿——そんな身近な「気づき」から、事業は始まっていました。

もしあなたにも、見つけてしまって、どうしても見過ごせない何かがあるなら。今日が、その一歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。

お申し込みはこちらから

ぜひこの志を共にする仲間を募集しています。8月2日が応募締め切りになっています。ぜひこちらのホームページをご参照いただき、一番下に申し込みフォームがございますので、そちらからお申し込みください。お待ちしております。

イベント名 みやざき創業アカデミー2026 キックオフイベントを開催しました。受講お申し込みお待ちしております
開催日程 2026/07/18(土)開催
活動レポート一覧