PROJECT

X dojo中間発表会

【開催趣旨】

X dojoは、地元企業が自社のありたい姿や課題(共創テーマ)を提示し、そのテーマに対してアイデアや解決策を持つスタートアップ、中小企業、大手企業などから広く共創プランを募集した上でいくつか選抜し、MOCが両者に伴走支援を行うことで商品開発・販路開拓に繋げ、宮崎の経済発展に寄与しようという試みです。
今回の中間発表では、「共創へのチャレンジから見えてくるもの」と題したパネルディスカッションのあと、ソラシドエアから提示されたテーマにご応募いただいた中から採択された2つのプランについて、各提案者から発表していただきました。

【日時、場所】

   令和7年11月26日(水)  18:00~19:40             於 : MOC

【プログラム】

(1)開催趣旨説明         18:00~18:10
 宮崎オープンシティ推進協議会 創発本部長 杉田 剛

(2)パネルディスカッション   18:10~18:50
 「共創へのチャレンジから見えてくるもの」
 ㈱ソラシドエア 地元価値共創本部 本部長 伊藤 智将
 ㈱SUNAO製薬 代表取締役社長 廣澤 直也
 (一社)宮崎オープンシティ推進協議会 創発本部長 杉田 剛

(3)ソラシドエアの共創テーマに対するプランの発表会  19:00~19:30
 【九州・沖縄プロモーター活動の認知度向上】
 AKASAKA farm / Pioneer Pork/ 宮崎カカオ (3社共同)
 「みやざきアグリツーリズムの創出」と「特色ある農家たちによる九州移住ドラフト会議への貢献」

 【環境・社会課題への取り組み】
 ㈱ピエクレックス
 空から笑顔の種をまく~ソラシドエア × P-FAXTS循環トラベル体験

(4)総括  19:30~19:40

≪概要説明≫

始めにX dojoの概要説明の後、今回ソラシドエアが提示したテーマ、
 ①九州・沖縄プロモーター活動の認知度向上
 ②付帯事業収入拡大
 ③環境・社会問題への取り組み
 ④その他
に対し、県内外から29件の提案があり、最終的に2件を採択したことが報告されました。

パネルディスカッション≫

「共創へのチャレンジから見えてくるもの」と題して㈱ソラシドエア伊藤本部長、㈱SUNAO製薬廣澤代表、MOC杉田によるパネルディスカッションを行いました。冒頭、ソラシドエア社とSUNAO製薬社の会社紹介を行いました。

ソラシドエアは宮崎に本社を置く航空会社で、社員は約1000名いますが、その90%以上が東京に勤務しており、宮崎には100名程度が勤務しています。羽田と地方をつなぐ路線を中心に事業を展開しているため、地元の皆様の支えがあって事業継続できており、コロナ禍で弊社も大きなダメージを受けましたが、地域経済も大きなダメージがあり、コロナから共に復活を目指し、地域活動を強化しています。地域課題の解決や活性化を目的とした「九州・沖縄プロモーター」活動を展開していますが、その例として、今年も東京の二子玉川で九州・沖縄を中心とした37の自治体に参加して頂き、地元商品の物販やPRを行うグリーンスカイフェスタというイベントを開催しています。また、熊本や鹿児島で耕作放棄地の畑を再生する活動なども行っています。地域活性化や地域課題解決につながる事業を担う「地元価値共創本部」は、既存の航空運送事業とは異なる活動方針や文化を持つ組織として、異業種経験者(中途採用が約6割)を積極的に採用し、独自の組織を構築しました。

SUNAO製薬は2011年設立、15年目のメーカーであり、地域の資源を活用した栄養食品や化粧品を製造・販売しています。社名は「素直な姿勢で仕事に取り組む」という思いに由来し、従業員26名のうち女性が8割超と活躍しています。事業は、企業からのOEM(受託製造)と、宮崎・九州の素材を使った自社商品のネット通販の二本柱です。商品例として、九州の大豆やモリンガを活用したプロテインや、宮崎県産の鶏レバーを加工した日本初の粉末栄養離乳食(赤ちゃんの鉄分補給用)などがあります。同社のミッションは、地域資源の付加価値創造と、地産外商。県外・海外から外貨を稼ぎ、生産者・加工業者や従業員に還元することで雇用創出や新規事業を促す「ハッピーサイクル」を拡大し、子どもたちの明るい未来に繋げることを目指しています。

①新規事業(チャレンジ)の必要性

問:既存事業に最適化された組織において、新規事業はそもそも必要か?

ソラシドエアの伊藤本部長(以下伊藤氏):航空運送事業は許認可事業で広がりがないが、コロナの様な外的要因に振り回される事業でもあるため、航空運送事業1本ではなく、新規事業によるリスク分散は不可欠と考えている。ただし、首都圏では新規事業が難しい中、地域には様々な「面白そうだね」と思えるフィールドが広がっており、新規事業のチャンスがある。ソラシドエアの「地元価値創造本部」は、航空会社の本体事業でもある航空運送事業とは別に異なるエコシステム(経済圏)を構築することを目指している。

SUNAO製薬の廣澤社長(以下廣澤氏)は、新商品開発を積極的に行う一方で、社内からは「鶏レバー」のように反対されることも多い。しかし、さまざまな新商品開発を進める中で、意図せず「離乳食事業」のような新しい事業が生まれることもあると、チャレンジの重要性を強調した。

②お二人の視座感(どこを見てマネジメントしているか?)

問:社長や執行役員のみている視座感(レベルやスピード、範囲など)は現場とどう違うか、目線合わせはどうしているか?

廣澤氏:視座は下がったり上がったりしていて、社員は相当困っているのではないか。とはいえずっと社長の目線というよりは経営と現場を行き来しながらコミュニケーションをとって社員と意見が合わない時は、会社のミッションに合うか、数年後を見据えてどうか、という視点で判断している。

伊藤氏:ソラシドエアの地元価値創造本部は5年での収益化・独立採算を目標としており、収益が見込めない場合は撤退も視野に入れているが、本体事業でもある航空運送事業があるために、スタートアップと比べ、資金的・時間的な猶予があるため、まだ「優しい環境」にある。

③チャレンジに必要な要素とは何か?

問:新規事業などチャレンジに必要な要素(人、組織、仕組み、マインドなど)は何と捉えているか?

伊藤氏:航空運送事業は、決められたことを決められた通りに実行し安全に運航することが求められるが、地域課題の解決や新たな事業を起こすには、航空運送事業的な考え方では難しい時がある。地元価値創造本部は、自由な発想や違う考えを取り入れるため、航空運送事業出身ではない異業種の経験者を採用し、航空運送事業とは異なる文化を意図的に作っている。この文化の違いから、地元本部メンバーは航空運送事業の社員から「何をやってるの?」という目で見られることもあるが、もっと自由にチャレンジして欲しい。

廣澤氏:チャレンジに必要な要素は、まず「やる!」という強い内発的な思いを持つ人材だとし、組織側は、彼らが失敗しても大丈夫だと言える「心理的安全性」を確保することが非常に重要であると強調した。

④今後10年の計

問:これまでの議論を含め10年後のありたい姿は?

伊藤氏:ソラシドエアは10年後も九州沖縄の翼として運航していくが、地元価値共創本部としては九州・沖縄プロモーター活動をさらに拡大し、地域課題の解決と新たな事業展開に取組み、地域の人が何かをやりたいとか、こんな課題があるという時に「とりあえず、ソラシドに聞いてみようか」と言ってもらえるような存在になりたい。

廣澤氏:SUNAO製薬は、2042年度に「従業員1000人、売上1000億円、平均年収800万円」という明確なビジョンを掲げている。10年後には、そのステップとして売上100億円を超え、生産者・加工業者や従業員が豊かで幸せな状態を地域に作っていることを目指している。

ソラシドエアへの提案内容の発表≫

1 ㈱ピエクレックス

ピエクレックスは、植物資源由来のポリ乳酸(PLA)を使った、摩擦や風力で電気を発生させ抗菌効果を発揮する繊維「P-FACTS」を開発。ソラシドエアに対し、「ゴミを出さないエアライン」の実現を提案しました。「P-FACTS」繊維は使用後に回収・リサイクル(土に戻すことも可能)し、地域で循環させる仕組みを構築しているため、地域貢献と環境負荷低減を同時に実現できると説明しました。

ソラシドエアは、CO2排出が避けられない業界にいるからこそ、環境に優しい取り組みが重要であるとし、提案に共感。航空法で規制される機体部品以外、例えばCAのエプロンやユニフォームなどに「P-FACTS」繊維を活用できるのではないかと模索しています。

会場の参加者からは、機内で提供するおもちゃを、「P-FACTS」対応繊維で作製し「発芽セット」として提供する案や、受験シーズンに合わせて「P-FACTS」 繊維の抗菌効果を活用した「応援マスク」を提供する案などが出されました。

2 CAPS(AKASAKA farm, Pioneer Pork,宮崎カカオ)

農業の自然栽培、放牧養豚、カカオ栽培を行う3社の若手農業者チームは、ソラシドエアに対し、農場見学や体験を組み合わせた「アグリツーリズム」のパックを提案しました。目的は、宮崎の農業を盛り上げ、若手農業者が定着するための「コミュニティ(仲間作り)」と、その成功の「モデルケース」を創出することです。特に県外からの関係人口を増やすことに焦点を当てています。

ソラシドエアは、3社の熱量と、異なる事業の融合による「未知なる可能性」に大変興味を持ち、東京からの日帰りツアーの実現性も確認しました。

会場の参加者からは、各農場の魅力をSNSで発信しインバウンドを呼び込むファンづくりを行う案や、農作業による運動と、自然栽培の栄養価の高い作物を食べる体験を組み合わせた「農業フィットネス」のプラットフォームを構築する案などが出されました。

チームは、3月までにターゲット層とツアー内容を固めることを目標としています。

≪今後の動き

引き続き、3月17日の最終報告会に向けてMOCが伴走支援を行い、4月以降はソラシドエア社と採択企業の継続的なディスカッションにより、事業化に向けて検討を重ねていきます。ぜひご期待ください。

イベント名 X dojo中間発表会
開催日程 2025/11/26(水)開催
開催時間 18:00-19:40
開催場所 MOC
参加費 無料
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