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【レポート】「ヤンキーの虎サミット in 宮崎」藤野英人氏と切り拓く宮崎の未来。地方経済を支える地方豪族と一緒に地域の未来を語り・繋がる会_2月6日開催

2026年2月6日(金)、MOCにて「ヤンキーの虎サミット in 宮崎(イベントページ)」が開催されました。本イベントは、地域経済の担い手や企業経営者、次世代の挑戦者が参加しました。

宮崎県全体の地域経済の停滞という課題に対し、「地元愛」「仲間意識」「突破力」を兼ね備えた人材を発掘・称揚することで、宮崎の未来を担う次世代のスタートアップ企業創出の機運を醸成し、地域活性化の “新たな時代” を創出することを目的とします。

基調講演には2025年6月にMOCスタートアップ顧問(参考記事)に就任したレオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役社長の藤野英人氏を迎え、続くクロストーク、事業者ピッチ、分科会を通じて、地域に根ざした実践と未来への視点が共有されました。

開会にあたり、MOC理事の斎藤潤一氏は、本サミットの開催趣旨について触れました。地域にはすでに多くの挑戦が存在している一方で、それが十分に可視化されてこなかった現状があると語ります。

今回の場を通して、地域で実践を続ける人たちの経験や言葉を共有し、次の挑戦につなげていきたいと述べ、会場に集まった参加者へ期待を寄せました。

1 藤野氏の講演

藤野氏の講演では、自身が提唱してきた「ヤンキーの虎」という概念を軸に、地域と経済、そして人の可能性について語られました。藤野氏はまず、「ヤンキーの虎サミット」という名称そのものが、自身が約10年前に執筆した著書『ヤンキーの虎』に由来していることに触れ、この言葉に込めた問題意識を改めて説明しました。

藤野氏が語る「ヤンキーの虎」とは、地域の中で顧客と向き合いながら事業を続け、地元経済を実質的に支えてきた企業や経営者の存在を指します。派手に脚光を浴びることは少ないものの、二代目・三代目として事業を継ぎ、雇用を守り、お金を地域の中で回してきた人たち。藤野氏は、「北海道から沖縄まで、こうしたヤンキーの虎は確かに存在してきた」と語りました。

一方で、こうした存在は長らく正当に評価されてこなかったとも指摘します。都市部の視点や、制度設計の文脈では見えにくく、地域創生が語られる場でも、必ずしも中心に据えられてこなかった。しかし、藤野氏は「地域を本当に支えているのは、理屈よりも実業で顧客に向き合ってきた人たちだ」と強調しました。

また、講演では「ヤンキーの虎が減ってきている」という現状への強い危機感も語られました。特に人口規模の小さい地域ほど、その影響は大きく、担い手不足や事業承継の問題が地域経済の土台を揺るがしているといいます。だからこそ今、「ヤンキーの虎」という存在をもう一度言語化し、可視化し、次の世代につなぐ必要があるのだと語りました。

講演の終盤、藤野氏は「人は意志だけでは動かない。環境が人をつくる」という言葉を繰り返し、ヤンキーの虎たちが育ってきた地域環境や、人との関係性の重要性に触れました。挑戦する人を生み出すのは、特別な才能ではなく、逃げずに向き合える環境であり、そうした場をどう残し、どう再生していくかが問われていると語ります。藤野氏の言葉は、ヤンキーの虎を過去の象徴としてではなく、これからの地域を担う存在として捉え直すメッセージとして、会場に強く響いていました。

2 クロストークセッション

クロストーク全体を通して、登壇者たちに共通していたのは、「逃げずに向き合ってきた経験」でした。華やかな成功談ではなく、迷いや葛藤を含めた実践の積み重ねが語られたことで、会場には共感と納得の空気が広がりました。地域や事業の現場で引き受け続けることの意味が、多角的に掘り下げられた時間となりました。

登壇者として、小平勘太氏(小平株式会社 代表取締役社長)、岡村充泰氏(株式会社ウエダ本社 代表取締役)、米良充朝氏(株式会社共立電機製作所 代表取締役社長/MOC理事長)、白木智洋氏(日鉄興和不動産農業株式会社 取締役/株式会社LIFE BASE 代表取締役)、香月稔(有限責任監査法人トーマツ パートナー 地域未来創造室 中小・スタートアップ支援全国リーダー)が登壇しました。地域や業種、立場の異なる5名が、それぞれの現場での実践をもとに意見を交わしました。

議論の中でまず共有されたのは、地域で事業を続けていくことの難しさと、その中で下される日々の意思決定の重さでした。人材確保や事業承継、組織づくりといった課題は、どの立場においても共通しており、「簡単な正解はない」という認識が語られました。一方で、そうした状況だからこそ、目の前の顧客や地域とどう向き合い続けるかが重要だという意見が交わされました。

また、登壇者それぞれが「地域との距離感」について言及した点も印象的でした。地域に根ざして事業を行う立場として、外部からの視点や新しい発想をどう受け入れるのか、あるいはどう調整してきたのかといった経験が共有されました。地域の文脈や歴史を尊重しながらも、変化を恐れずに一歩踏み出すことの難しさと必要性が語られました。

クロストークでは、人材との向き合い方も大きなテーマとなりました。単に人を集めるのではなく、「一緒に引き受けていく関係性」をどう築くか。登壇者からは、失敗や試行錯誤を重ねながら、少しずつ信頼関係を積み上げてきた経験が語られました。人を育てるというよりも、環境や場を整えることの重要性が共通の認識として浮かび上がりました。

さらに、地域で事業を続ける中で求められる「当事者意識」についても話題が及びました。制度や支援に頼るだけではなく、自分ごととして引き受ける姿勢がなければ、事業も地域も前に進まないという意見が示されました。こうした言葉は、藤野氏の講演で語られた「環境が人をつくる」という視点とも重なり、会場の参加者にとって強く印象に残る内容となりました。

3 分科会

分科会は、参加者が自分自身の立場や現場に引き寄せて考える時間となり、「自分は何を引き受け、どこで関わっていくのか」を静かに問い直す場となりました。

分科会全体を通じて浮かび上がったのは、地域や事業の現場では「誰かが引き受ける役割」が不可欠であるという共通認識でした。スタートアップの創出、産業を越えた共創、企業の再定義、地域での事業継続といったテーマは異なりながらも、最終的には「引き受ける人の存在」に行き着いていました。

また、環境づくりや関係性の設計が、人や事業の成長に大きく影響することも共有されました。他地域に学ぶ姿勢、立場を越えて関わる視点、人を中心に据えた価値づくり、そして未来を見据えた覚悟。これらは単独ではなく、相互に結びつきながら地域の土壌を形づくっていく要素として語られました。

①佐々木 喜徳氏(株式会社ガイアックス 執行役/一般社団法人スタートアップスタジオ協会 共同代表理事)

佐々木氏は、「地域から日本を代表するスタートアップ企業が生まれるには何が必要か」という問いを掲げ、議論をスタートさせました。地方では、地域間の移動が少なく、他地域の事例や成功・失敗に触れる機会が限られていると指摘します。その結果、自分たちの地域の強みや弱みを相対的に把握しづらくなっている現状があると語りました。

分科会では、他地域のベストプラクティスを学ぶことの重要性や、同じ地域にいないからこそ本音で話せる関係性の価値が共有されました。また、地域の社会課題に正面から向き合い、負の要因を取り除きながら、地域であること自体をプラスに転換していく視点が示されました。スタートアップが生まれ、育つためには、個人の挑戦だけでなく、それを支える環境や関係性が不可欠であることが語られました。

②篠原 健太氏(株式会社リブ・コンサルティング パートナー/住宅・不動産・建設クロスイノベーション事業部 部長/建設・不動産未来共創Lab 代表)

篠原氏は、「産業や立場の垣根を越えて共創するために、自分たちは何ができるのか」という問いを提示しました。産業や組織、立場が異なる主体が集まる場において、単なる連携や掛け声だけでは共創は進まないと述べます。重要なのは、それぞれが果たせる役割を自覚し、相手の立場を理解したうえで関わることだと語りました。

分科会では、企業、自治体、大学、スタートアップといった多様なプレイヤーが関わるからこそ生まれる価値について意見が交わされました。篠原は、短期的な成果を求めるのではなく、次世代に何を残すのかという長期的な視点で事業や共創を捉える必要性を強調しました。日々の実践の積み重ねが、産業を越えた協働につながっていくという考えが共有されました。

③岡村充泰氏(株式会社ウエダ本社 代表取締役、一般社団法人ローカル・スタートアップ協会 会長理事)

岡村氏は、自社の歩みを振り返りながら、「人を生かした価値創出業」という事業の再定義について語りました。文具卸として創業したウエダ本社が、時代の変化とともに事業領域を広げ、「働く環境の総合商社」へと進化してきた過程が紹介されました。

分科会では、オフィスづくりを通して「人にスポットを当てる」「つながりをデザインする」という考え方が共有され、企業が地域のハブとして果たせる役割についても言及されました。産・官・学・文化など、立場を越えた関係性の中から新たな価値が生まれてきた実践例が語られ、参加者にとって具体的なイメージを持てる内容となりました。

④石田遼氏(株式会社NEWLOCAL代表取締役)

石田氏は、仕事や地域の「10年後」を想像する視点を提示し、地域で事業を続けることの覚悟について語りました。元気な地域には共通点があり、それは未来を引き受ける覚悟を持った人がいるかどうかだと述べます。

分科会では、想いだけでは事業は続かず、暮らしとして成り立たせる視点が欠かせないこと、そして愛情があるからこそ簡単には諦められない現実について共有されました。理想と現実の間でどのように判断し、選択を積み重ねていくのかというテーマが、参加者との対話の中で深められていきました。

4 最後に

イベントの締めくくりとして、MOC理事長の米良充朝氏は、これまでの議論全体を受け止めながら、地域や企業に向き合う姿勢について語りました。米良氏は、藤野氏の講演や分科会で語られた内容に触れ、地域には多くの担い手や挑戦がすでに存在していることを語りました。そして彼らの挑戦の元になる「覚悟」について触れました。

米良氏が考える「覚悟」と「愛情」の関係です。会社や地域に対して愛情を持って接するからこそ、困難な場面でも逃げずに向き合うことができる。逆に、愛情がなければ、責任を引き受け続けることは難しいと語ります。これまでのセッションで共有されてきた「引き受ける人の存在」というテーマを、個人の姿勢の問題として引き寄せていく言葉でした。

「地元になぜ虎のような人たちがいるのかは、おそらく地元が好きだからだと思います。多分、覚悟を持った人間になれっていう反対側には、地域を盛り上げる覚悟を持った人間になれっていう言葉もあると思うんですよね。覚悟の裏に必ず愛情がないと、多分その覚悟は独りよがりになって、人に迷惑をかけたりすることにちょっと近づいていくんじゃないかと思います。その地域や会社を好きになるというか、そこに愛情を持って接するから、虎が増えていく。そういう虎が地域に増えると、多分すごい日本になっていくと思うんですよね。」

最後に、米良氏は、今日のサミットが単なる学びの場で終わるのではなく、それぞれが自分の現場に戻ったあと、行動につながっていくことへの期待を語りました。地域や会社に対して「自分は何を引き受けるのか」。その問いを胸に持ち帰ってほしいというメッセージを残し、「ヤンキーの虎サミット in 宮崎」は幕を閉じました。

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