少子化と高齢化、AIが広がる中で宮崎に活路はあるのか?
〜ひなたフェスの仕掛人が考えるローカルビジネスの未来〜
人口減少に伴う市場縮小や人材確保難など、経営環境が転換期を迎える中、「発想の転換による持続可能な経営モデルの再構築」をテーマに、地域企業の経営課題解決に向け第一歩となるセミナーを開催しました。参加されたのは、会社の経営者や個人事業主など25名。宮崎でビジネスを展開していく上での活路はどこにあるのか、熱心に講演・ワークショップに取り組んでいました。
- 基調講演(講師 : 牧 巌 氏) 18:00~18:30

働く人よりも社会保障で支えられる人の割合が高くなる「人口オーナス期」に地域企業はどう 活路を見出せばいいのか。ローカルにビジネスチャンスはあるのか?
「未来カルテ2050」のデータから、ビジネスの「種」の見つけ方を長年放送局で番組制作、人材育成に携わった講師がアイディアの出し方や発想法を地域企業のチャレンジ事例を紹介しながら紹介しました。
1. イントロダクション:宮崎が直面する「8割経済」の衝撃
講師の牧氏は、TBSでの勤務を経てMRT(宮崎放送)の社長を務めた経歴を持ち、現在は「ひなたフェス」などの地域創生事業に尽力しています。牧氏が経営において大きな衝撃を受けたのは、4〜5年前に「未来カルテ」というデータを目にした時でした。
このデータによると、2050年には宮崎県の人口が現在の約8割(70万〜80万人)に減少すると予測されています。コロナ禍において、放送局の収入が人口減に比例するように8割程度に落ち込んだ経験から、牧氏は「8割の人口で会社を経営することの難しさ」を痛感しました。今のままのビジネスモデルでは成立しない未来が確実にやってくるという危機感が、本講演の出発点となっています。
2. アマゾン流「発想の転換」:プレスリリースから逆算する
経営の転換期において、牧氏が提唱するのが「ゴールの設定」と「逆算の思考」です。牧氏はTBS時代の研修で学んだAmazonの成功事例を挙げました。通常、番組や商品は完成してからプレスリリース(広報資料)を書きますが、Amazonは「最初にプレスリリースを書く」ことから始めます。
「その企画が世の中の役に立つのか」「ニュースになる価値があるのか」を先に言語化し、経営陣がその価値を認めてからプロジェクトを動かす手法です。下から企画を積み上げる従来の方法ではリスクばかりが議論されがちですが、「あるべき姿(ゴール)」から下ろしていくことで、物事のスピードと成功確率は飛躍的に高まります。2050年の宮崎がどうなっているかという想像から、今の経営を考えることが不可欠です。
3. AIの進化と労働環境の変化
急速に普及するAIについても、認識を改める必要があります。東大の松尾豊教授の指摘を引き合いに、牧氏は「AIを使いこなせなければ仕事がなくなる時代」が到来していると述べました。
かつては「AIで仕事は減らない」と言われていましたが、現在はプログラミングさえもAIが代替するようになっています。アメリカではAIによるリストラも始まっており、日本も法規制の違いはあれど、大きな変化は避けられません。これからの時代に生き残るのは、AIを道具として使いこなしつつ、経験に裏打ちされた深いコミュニケーションが取れる人材です。
4. 為替リスクと宮崎の地政学的課題
「未来カルテ」には記されていない重要な視点として、牧氏は為替(円安)の影響を強調しました。2050年に1ドル200円〜250円という超円安が進んでいる可能性を考慮しなければなりません。宮崎の農業や畜産業は食料自給率が高いと思われがちですが、実際には飼料や肥料の多くを海外からの輸入に頼っています。円安が進めば、現在の生産モデルは維持できなくなる恐れがあります。「真の自給」や「円安下での外貨獲得」を視野に入れた次なるビジネスの構築が急務です。
5. 持続可能な経営モデルの先行事例
人口減少や高齢化を逆手に取った、新しい経営のヒントも紹介されました。
• 高齢者の潜在能力活用: 宮城蔵王の「ガイア」という会社は、65歳以上の高齢者がスキマ時間で掃除や草むしりなどのバイトができる仕組みを作り、成功しています。元看護師が働くサブスク型の喫茶店を運営し、高齢者の健康管理と社会参加、そして孫への消費という経済循環を生み出しています。
• 専門知識の再利用: 銀行や企業を定年退職した専門家集団によるコンサルティング会社「CNコンサルティング」は、高い知見を安価に提供し、世の中の役に立つモデルを構築しています。
• グローバル展開と逆輸入: ベトナムで成功し、現地の技術と人材を宮崎の工場へ繋げている「児湯食鳥」や、海外でのPRに注力する高千穂の椎茸農家などの事例があります。
• 固定費の削減と発想の転換: 放送作家の小山薫堂氏の事務所「オレンジ・アンド・パートナーズ」は、1階をカフェ(猿田彦コーヒー)にし、そこを打ち合わせスペースや福利厚生に活用することで、場所代という固定費を価値に変えています。

6. 結論:変化に対応し、情報を自ら取りに行く
牧氏は最後に、「変化に対応できないものは生き残れない」というメッセージを送りました。 現代はスマホのアルゴリズムにより、自分に都合の良い情報(好きな情報)しか入ってこない「情報の偏り」が起きています。だからこそ、あえて多くの人がしない方法で情報を収集することが重要です。
• 多様なメディアの活用: 雑誌(Dマガジンなど)や業界紙、図書館での情報収集。
• 現場の視察: 海外(ベトナム、台湾、カンボジアなど)へ足を運び、人と直接会うこと。
• メディアリテラシー: その情報が正しいかを見極める力を養うこと。
2050年の宮崎において、人口が減る中でも「関係人口」を増やす(例:ひなたフェス)といった戦略や、自動運転などの新技術を取り入れながら、「30年後のゴール」を想像して一歩を踏み出すことが、持続可能な経営モデル再構築の鍵となります。
- ワークショップ(講師 : 竹中 功 氏) 18:30~20:00

経営者・幹部層が直面している経営課題を洗い出し、次回以降のセミナーで成功事例等を参考に課題解決のヒントを探るため、ワークショップを開催しました。
このワークショップは、吉本興業で「謝罪マスター」として危機管理に携わってきた竹中氏の指導のもと、参加者が「ジェットコースターに乗った気分」で自社の課題を洗い出し、明日からの具体的なアクションを宣言するまでを90分で行うという非常にスピード感のある構成でした。
ワークショップは、以下の3つのステップで進められました。
1. 【個人ワーク】自社の隠れた課題を見つける 自社や自身が直面している「困っていること」「悩み」「リスク」を、1枚の付箋に1つずつキーワードで書き出します。表面的な問題だけでなく、リスク管理の観点から「見過ごしていた課題」を可視化することが目的です。
2. 【グループワーク】課題の整理と優先順位の決定(KJ法) グループ内で付箋を分類して「テーマ(見出し)」をつけ、全員で投票を行って、明日から解決に取り組むべき「重点課題トップ3」を絞り込みます。
3. 【対策案の策定と宣言】具体的な解決策を出し切り、明日からの行動を約束する
選んだ課題に対し、既存の常識に縛られない自由な発想で「対策アイデア」を出し合います。最後には、各班が明日から必ず実行する「アクション」を宣言します。

【各班の発表内容】
各グループは、それぞれ異なる視点から経営課題を特定し、明日からのアクションをまとめました。
• 1班:縦横の風通しの改善と雑談の活用
◦ 課題: つながりのマネタイズ不足、組織の風通しの悪さ、個人の健康。
◦ 対策: 部署や立場の異なる人の状況を理解し合うため、交流の場に積極的に出る。会議室以外の「雑談」からアイデアが生まれるため、毎日違う人と食事をしてコミュニケーションを図る。
◦ 明日からの宣言: 「明日の昼食は(違う誰かと)新鮮に!」
• 2班:自社の価値の可視化と認知度向上
◦ 課題: 人材流出、投資資金の不足、営業力・知名度の低さ。
◦ 対策: 自社の持つ価値を「見える化」し、SNSやホームページで発信する。今日のワークショップでの出会いを大切にし、一社で抱え込まず他社と「協業(コラボレーション)」する。
◦ 明日からの宣言: 「みんなとコラボレーションしていくぞ!」
• 3班:国語力(言語化能力)の向上
◦ 課題: 言葉の力(国語力)、自分自身の健康、世界平和。
◦ 対策: 思考力や伝達力を高めるため、良質なインプット(読書)と自発的なアウトプット(初対面の人との対話)の質を上げる。
◦ 明日からの宣言: 「マイバックに今日の1冊を入れて、ちゃんと読む!」
• 4班:属人化の解消と信頼できる仲間づくり
◦ 課題: 予算を渋る上層部、宮崎特有の「ネタみ・そねみ」、専門職の属人化リスク。
◦ 対策(属人化): 専門社員の知見を自社独自のAIに学習させ、誰でも引き出せるようにする。
◦ 対策(そねみ): 否定的な意見は気にせず、信頼できる仲間を巻き込んでいく。
◦ 明日からの宣言: 「ネタみ・そねみを気にせず、信頼できる仲間を作り、周りを巻き込んでいくぞ!」
• 5班:AIの活用とリテラシー向上
◦ 課題: 宮崎ならではのしがらみ、AIへの漠然とした不安、単価アップの難しさ。
◦ 対策: AIを「部下や奴隷」にするため、まず使って学ぶ。ネット上に自社情報を積極的に放出し、AIに営業を代行させる状態を目指す。
◦ 明日からの宣言: 「AIを駆使するぞ!」


【総括】
講師の竹中氏および牧氏は、ワークショップの締めくくりとして以下の重要なコンセプトを強調しました。
• 失敗から学ぶ: 成功体験よりも失敗から学ぶ力、そしてそれを共有し合える関係性が組織を強くします。
• コミュニケーションの先にある「信頼」: ビジネスの根幹は信頼関係であり、その信頼は丁寧なコミュニケーションと、「口に出したことをやり遂げる」という約束の遵守から生まれます。
※ 次回以降のセミナーでは、これらの洗い出された課題に対し、具体的な成功事例を参考にしながら、さらに深掘りした解決策を探っていく予定です。(ポストモーテム第1回は、牧氏の紹介で山口さんをお呼びしてAIセミナーを実施する案が提示されました。)

| イベント名 | 少子化と高齢化、AIが広がる中で宮崎に活路はあるのか? |
|---|---|
| 開催日程 | 2026/01/14(水)開催 |
| 開催時間 | 18:00-21:00 |
| 開催場所 | MOC |